【衝撃の試算】こころの不調で7兆円損失？「なんとなく不調」が招く日本経済の危機と、私たちが今できること

「最近、会社に行くのが億劫だ」「デスクには座っているけれど、頭が働かない」――。
もしあなたがそんな感覚を抱いているとしたら、それはあなた個人の問題だけではありません。最新の研究によると、日本国内におけるメンタルヘルス不調による経済損失は、なんと年間約7兆円に上るという衝撃的なデータが明らかになりました。なぜこれほど巨額の損失が生まれるのでしょうか？ニュースの深層を紐解き、私たちビジネスパーソンが明日からできる対策を考えます。

1. 年間7兆円の損失とは？数字が語る「見えないコスト」

先日発表された慶応大学や杏林大学などの研究チームによる推計で、うつ病や不安障害などのメンタルヘルス不調に伴う経済的損失が、2023年時点で少なくとも6兆7000億円超に上ることが分かりました。

7兆円といってもピンとこないかもしれませんが、これは日本の国家予算の重要項目にも匹敵する規模であり、企業の利益を根こそぎ奪いかねない数字です。では、具体的にどこで損失が発生しているのでしょうか？

損失の正体は「欠勤」だけではない

多くの人が「メンタル不調による損失」と聞いてイメージするのは、「病気で会社を休むこと（欠勤）」でしょう。専門用語ではこれをアブセンティイズム（Absenteeism）と呼びます。

しかし、今回のデータで特に注目すべきは、実はそこではありません。損失の大きな割合を占めているのは、「出勤はしているが、不調により生産性が低下している状態」なのです。これをプレゼンティイズム（Presenteeism）と呼びます。

プレゼンティイズムの恐怖

• 集中力が続かず、単純なミスが増える
• 判断力が鈍り、意思決定に時間がかかる
• コミュニケーションが億劫になり、チームワークが乱れる

このように、本人は頑張ってデスクに向かっているつもりでも、本来のパフォーマンスが発揮できていない状態が長く続くことで、企業全体、ひいては日本経済全体に莫大な「見えないコスト」を発生させているのです。

2. なぜ「相談の輪」が必須なのか？

今回のニュースで専門家たちが警鐘を鳴らしているもう一つのポイントは、「相談することへのハードル」です。

「誰にも言えない」が損失を拡大させる

データによると、こころの不調を感じて医療機関を受診したり、相談窓口を利用したりする人は依然として少ないのが現状です。「評価に響くのではないか」「弱い人間だと思われたくない」という心理的な壁が、早期発見・早期治療を妨げています。

結果として、軽度の不調が重症化し、プレゼンティイズムから長期のアブセンティイズム（休職・退職）へと移行してしまう。この悪循環が、経済損失を7兆円まで膨れ上がらせている要因の一つと言えます。

必須となる「相談の輪」づくり

記事のテーマにもある「相談の輪」とは、単に産業医を置けばいいということではありません。

• 上司と部下が1on1で本音を話せる関係性
• 同僚同士で「最近疲れてない？」と声を掛け合える雰囲気
• 外部の専門家へ匿名でアクセスできるシステムの周知

これらが機能し、有機的につながることで初めて、私たちは「不調を隠す」ことから「不調をマネジメントする」ことへとシフトできるのです。

3. 明日からできる！個人と企業の処方箋

では、この巨額の損失を防ぎ、私たち自身が健康に働き続けるために何ができるのでしょうか。

個人ができること：セルフモニタリングの習慣化

まずは「自分の状態に気づく」ことがスタートです。「なんとなくダルい」を放置せず、睡眠の質や食欲の変化を観察しましょう。そして、少しでも違和感があれば、信頼できる同僚や家族、あるいは公的な相談窓口に「ちょっと話を聞いてほしい」と伝える勇気を持つことが大切です。

企業ができること：心理的安全性への投資

経営層やリーダー層は、「メンタルヘルス対策＝コスト」ではなく「生産性向上のための投資」と捉え直す必要があります。

具体的には、失敗や弱音を吐いても非難されない「心理的安全性」の高いチーム作りを目指すこと。これが、結果的にプレゼンティイズムを減らし、企業の業績アップに直結する最短ルートとなります。

まとめ：7兆円の損失を「投資」に変えるために

こころの不調による7兆円の経済損失。この数字は、日本社会が抱える「働きづらさ」の総量とも言えます。しかし、裏を返せば、私たちがメンタルヘルスにもっと関心を持ち、互いにケアし合える環境を作れば、それだけの「伸びしろ」が日本経済には残されているということです。

「最近、無理してない？」
この一言が、あなたの隣の同僚を、そして7兆円の損失から日本を救う第一歩になるかもしれません。