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与野党こぞって「消費税減税」の怪。
年5兆円の財源はどこへ消えた?
甘い言葉の裏にある「財政の現実」と「成長戦略の不在」を徹底分析
高橋 経済一郎
2024.10.25 更新 | 読了時間:約5分
「消費税、下げてくれたら嬉しいですか?」
こう聞かれて「No」と答える人は、おそらくいないでしょう。物価高にあえぐ今、手取りが増えるような感覚は誰もが歓迎したいはずです。しかし、今永田町で起きている現象は、少し奇妙です。与党も野党も、まるで示し合わせたかのように「減税」や「給付」を叫び始めました。
聞こえはいい。最高に心地いい響きです。しかし、私たちは冷静にならなければなりません。なぜなら、そこには「年間5兆円」とも言われる巨大な財源の穴がポッカリと口を開けているからです。
今日は、ニュースの見出しだけでは見えてこない「減税のリアル」について、政治的なポジション抜きに、家計簿と電卓を片手に持つ感覚で一緒に考えていきましょう。
01 なぜ今、全員が「減税」なのか?
通常、財政規律(国の財布の紐を締めること)を重視する与党と、再分配を重視する野党という対立軸があるはずです。しかし、現在の選挙戦や政策論争を見ていると、その境界線が完全に溶けています。
理由はシンプルです。「物価高」という国民の痛みが限界に達しているからです。
スーパーに行けば卵も野菜も高い。ガソリン代も高止まり。この状況下で「将来のために増税が必要です」と言えば、選挙で勝てないことは火を見るより明らかです。
結果として、与党内からも野党からも「消費税の減税」や「一時的な撤廃」、「給付金」といったカードが次々と切られています。まさに「減税オークション」の様相を呈しています。
02 【図解】見えない「5兆円」の正体
ここで一度、言葉だけでなく「数字」と「構造」でこの問題を可視化してみましょう。
消費税を1%下げるだけで、国には約2.5兆円〜3兆円の影響があると言われています。大規模な減税を行えば、年間で5兆円規模の穴が空きます。
この構造を、ひと目で分かる図解にしました。
消費税減税の「不都合な真実」
政策のメリットと隠れたコストのバランスシート
手取り感の向上
- 買い物時の負担減
- 一時的な消費喚起
- 低所得者への恩恵
財源の壁
代償とツケ
- 社会保障の削減?
- 国債(借金)の増発?
- 円安加速のリスク
結論:財源(代わりの収入)なき減税は、将来への借金でしかない。
いかがでしょうか。左側の「メリット」はすぐに実感できますが、右側の「代償」は見えにくいものです。
「5兆円」という数字は、日本の防衛費の約半分、あるいは教育予算の大部分に匹敵する巨額です。
03 成長戦略なきバラマキのツケ
私が最も懸念しているのは、「減税した後、どうやって経済を成長させるのか?」という議論が置き去りにされている点です。
減税はあくまでカンフル剤(一時的な刺激)です。体力が弱っているときにカンフル剤を打てば一時的に元気にはなりますが、基礎体力がつくわけではありません。
「財源はどうする?」と聞かれた政治家たちが、「経済成長による税収増で賄う」と答える場面をよく見かけます。しかし、具体的な成長の道筋(イノベーション支援、労働市場の改革、少子化対策の実効性など)が見えなければ、それは「絵に描いた餅」です。
💡 具体的な事例:過去の教訓
過去にも「減税」や「給付金」が行われましたが、その多くが貯蓄に回ったり、一時的な消費で終わったりしました。持続的な賃上げや企業の投資拡大につながらなければ、数年後に待っているのは「さらに膨らんだ国の借金」と「増税の再来」です。
04 私たちがニュースを見る視点
私たち有権者やニュースの読者に求められているのは、「減税=善、増税=悪」という単純なレッテル貼りをやめることかもしれません。
政治家の「税金を下げます!」という言葉を聞いたとき、私たちは即座に次の質問を投げかける必要があります。
- Q1. 代わりにどのサービスを削るのですか?
- Q2. その穴埋めは、将来の私たちの子どもたちが払うのですか?
- Q3. 減税の先にある、日本を稼げる国にするプランは何ですか?
美味しい話には裏がある。これはビジネスの世界も、政治の世界も同じです。
目先の5兆円の甘い蜜よりも、10年後の日本がどうなっているか。その設計図(成長戦略)を提示できる政治家や政党を見極める目こそが、今求められています。
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